このあと俺は、奥さんや千春さんにも挨拶に行った。


別れを告げると、奥さんはひどく悲しんで。


寂しくなるわと、沢山涙を流しておられた。


そして、ありがとうと言ってくださった。


千春さんは千春さんで。


ごめんなさいと、俺に何度も謝っていた。


俺こそごめんなさいと言って。


最後に固い握手をした。




千春さん…。


絶対、幸せになってください。


陸上を辞めたことなど、どうでもよくなるくらい。


俺のことなんて、すっかり忘れてしまうくらい。


どうか。


どうか幸せに…。


そして、いつかまた。


笑顔で会える日が来るといいですね。




こうして俺は。



4年間勤めたパン屋を退職したのだった。