「師匠。

今までありがとうございました。

本当に…。

本当にお世話になりました」


俺の言葉を聞いて、師匠も立ち上がる。


「事故を起こしたのに、俺に居場所を与えてくれて。

仕事も教えてくださって。

それに、こんなに沢山の退職金まで…。

なんてお礼を言っていいか…、わかりません…」


言いながら、また涙がぽろぽろと流れた。


「こちらこそ…。

店のために沢山貢献してくれて、本当にありがとう…。

その退職金は、キミが頑張った分のご褒美だよ。

もっと多くたっていいくらいだ。

これくらいしか用意できなくて、ごめんよ…」


俺は首を横に振った。


「隆治君。

幸せになるんだよ。

キミなら絶対に大丈夫。

どこへ行っても、何を選んでも。

きっと立派にやり遂げるだろう。

千春のことなら心配いらない。

きっとすぐに好きな人が出来て、いつか幸せな結婚をする日が来るよ。

あんまり早くお嫁に行かれても寂しいから。

親子三人水入らずで、もう少し楽しもうと思うよ」


師匠は目を細めて、にっこり笑った。


「ありがとうございました…。


本当に。


ありがとうございました…」