「千春のことは気にせずに、その好きな子のところへ行ってあげなさい。

二人とも、ずっと我慢して来たんだろう?

もういいんだよ。

これからはずっと一緒にいていいんだよ」


本当に…?


本当にもう。


俺…。


自由になっても、いいのかな…?


「千春はね、子供の頃から勉強も運動もわりと良く出来る子だったから。

それでよしとしていたところがあって、他の部分ではちょっと甘やかして来たところがあるんだ。

今回、ちょっと母親にワガママを言っていたようなんだ。

すまないね…。

ちゃんと言って聞かせたから」


「そう…なんですか?」


「千春も本当はわかってるんだよ。

キミ達の絆が強いことも、もう隆治君を取り戻せないことも。

でも、あきらめきれなくて、つい悪足掻きをしてしまったらしい。

許してやってほしい」


師匠が申し訳なさそうに眉を曲げる。


そんなこと…。


今となってはもう…。


俺はスッと立ち上がった。