俺が全て話したあの日、母親は何か考えているような素振りだったけど。


あの時にもう、師匠に話そうと決めていたんだな…。


「すみません。

入院中なのに、母が急に押しかけて、そんな話をしたりして…」


退院まで待てばいいのに、どうしてそんなに急いだんだろう…。


「ウチの家内が、どうやらキミを必死で引き止めていたようだね。

入院中だろうが、そんなこと気にしないで、早く話してくれて良かったんだよ。

昨日、家内には厳しく言っておいたから。

本当に申し訳ない…」


俺は首を横に振った。


「あの…、でもいいんですか?

俺が辞めたら、ここのお店…」


師匠は退院したばかりだし、無理も出来ないのに…。


「もう職安に求人も出しておいたよ。

これからはもう少し人を増やして、一人一人に負担をかけ過ぎないようにするつもりだよ。

後継者がいなくて、この店を閉める日が来ても、それでも構わないんだ。

女の子しか生まれなかった時点で、その覚悟はもうとっくに出来ていたしね…」


そうだったんだ…。


俺はてっきり、後継者を必要としているのかと…。