「退職金…?」


え…?


どういう意味…?


「今月の給料も一緒に入ってる」


「ちょっ、あの。

全然意味がわからないんですけど…」


今の今、辞めたいって話したのに、どうしてこんなものが用意してあるんだろう。


「実はね…。

一昨日キミのお母さんが、僕が入院している病院に来られたんだよ」


「へっ?」


母親が?


なんで?


「その時に、全部教えてくれたんだよ。

事故の日から今までのことを、全部…」


何やってんだ?あの人。


そんなこと、俺にはひと言も…。


「何度も頭を下げておられたよ。

今まで挨拶に一度も来なかったことを、とても悔やんでおられてね。

そして、これからは自分が代わりに償いますから、どうか隆治のことを許してやってくださいって…。

もう何度も何度も…」


信じられない…。


母親が俺のために、そんなことをするなんて…。


「隆治を好きな子のところへ行かせてやりたいので、仕事を辞めることを許して欲しいって。

それで僕は、このお金を用意することに決めたんだ…」


「師匠…」