「そう…」


奥さんはぽつり呟いた。


その言い方が千春さんに似ていて、少しゾッとした。


「長谷川君の気持ちはよくわかったわ…」


「え?じゃあ…」


俺は思わず立ち上がった。


「だけど、私の一存だけじゃ何も決められないわ。

やっぱり主人と話してもらわないと…。

でも、今は話さないでちょうだい。

主人が退院してから、ゆっくり話し合いましょうよ」


「え…?」


俺は大きく目を開いた。


そ、んな…。


それじゃあ、今までと何も変わらないじゃないか!


「その昔の恋人と会うなと言ってるわけじゃないんだから。

そんな顔しないで…」


奥さんが苦笑いをする。


それはそうだけど…。


こんな中途半端な状態じゃ、なんだか不安でたまらない…。


すず…。


ごめん…。


まだまだお前を安心させてやれそうにない。


本当にごめん…。


ごめんな…。