長谷川君…。


付き合うことになっても、私と長谷川君の間には、特に恋人らしい展開は何もなかったよね。


すごくじれったかったし、もっとあなたの近くに行きたかったけど。


でも、なぜか必要以上に寄せ付けない、大きな壁を感じていたの。


どうしてなんだろうってずっと不思議だったけど。


すずちゃんが好きだったからなんだね…。


事故に遭って、ハードルが跳べなくなって、絶望を感じたけど。


それ以上に長谷川君と出会えたことが、幸せだった。


優しくて誠実な性格と、その澄んだ瞳が大好きだった。


毎日一緒に食事をして、家族同然の生活をしたよね。


長谷川君の洗濯物を干したり、たたんだりする瞬間も嬉しかったよ。


朝、洗面所で一緒になったり、リビングや台所で話をしたり。


一生懸命仕事をする寡黙な姿も、目に焼きついてるよ。


こんなに好きなのに、どうやって忘れたらいいんだろう?


でも、もうどうしようもないんだよね…。


私の生まれて初めての恋は。


こうして幕を閉じたのだった。