「今までごめんね…、すずちゃん。

つらい思いさせて…。

でももう、これからは大丈夫。

だから、早く元気になってね。

退院したら、また会おうね…」


私がそう言うと、すずちゃんは笑顔で頷いた。


くるり振り返って、今度は長谷川君の前に行く。


「じゃあ、私…もう帰るね…」


長谷川君は心配そうに私をじっと見ている。


「そんな顔しないで。

私なら、大丈夫だから…」


そう言って歩き出そうとすると、右京君が私の腕を引いた。


「千春ちゃん、家まで送ろうか?」


右京君の言葉に、私は首を横に振った。


「大丈夫。一人で帰れる」


「でも…」


「ヤケになったりしないって。

そこまでバカじゃないから」


右京君の腕が離れるとすぐに、私は右京君とサエちゃんに手を振って、病室を後にした。


廊下に出た途端、私はすぐに走り始めた。


ひたすら走って、走って、電車に飛び乗った。


乗るとドア付近に立ち、夜の街をぼんやり眺めた。


それを見ていたら、だんだん視界が涙で滲んで来た。