私はゆっくりと歩き出し、すずちゃんのそばへと近づいた。


すずちゃんはずっと泣きっぱなしで、目が真っ赤になっていた。


「すずちゃん…。さっきはごめんね…。

動揺して、ひどいこと言っちゃった…」


「千春ちゃん…」


「よく考えてみたら、すずちゃんは長谷川君に再会してすぐ、パンはいらないって断ってたよね。

距離を置こうとしてたんだよね?

それなのに私が長谷川君を連れて、片岡君とのデートに合流したりして。

結局、私が二人の気持ちを余計に蘇らせちゃったんだよね」


そう思うと、私は二人の恋のキューピッドだったのかな。


「すずちゃん、長谷川君が好き…?」


私の問いに、すずちゃんの瞳がゆらゆら揺れる。


すずちゃんは一度目を伏せると、ゆっくり顔を上げた。


「千春ちゃん、ごめんね…。

あたし、隆治に振られてからもずっと。

隆治を忘れられなかった。

いつまでも引き摺って。

新しい恋なんて、出来なかった…」


すずちゃんの言葉に、私はうんと頷いた。


「隆治が好き…。

誰よりも、好き…」


泣きながらだったけど、すずちゃんの言葉はすごく力強かった。