「どうして…。

どうして言ってくれなかったの…?

正直に言ってくれてたら、私…」


当時、長谷川君に恋人がいると知っていたら。


私、長谷川君を好きになったりしなかった。


そんな対象で見ることなんて、なかったはずなのに…。


あまりにせつなくて俯いていたら、私の頭上に右京君のため息がかかった。


「そうだよな…。

俺もそう思うよ。

すずと別れる必要なんか、なかったんじゃないかって思う。

でも。

それだけ千春ちゃんに責任を感じてたんだよ、隆治は…」


私は事故直後からの、長谷川君を思い返していた。


いつも、いつも。


長谷川君は私のそばにいてくれた。


リハビリに付き合ってくれたり、受験勉強に付き合ってくれたり…。


本当に会いたい相手はすずちゃんだったはずなのに。


懸命に私に尽くしてくれていたんだ。


そう思うとなんだか悲しくて、私は気がつけば、涙を流していた。