右京君の言葉に、私は後ろを振り返った。


すると、腕に点滴をしたすずちゃんが、涙を流しながらこちらを見つめていた。


視線を長谷川君に移すと、彼も泣きそうな顔で私をじっと見つめていた。


たまらず目を伏せた。


そんな…。


二人は恋人同士だったなんて。


ふとすずちゃんが、長谷川君の作ったパンを初めて食べて、おいしいと言ったあの日のことを思い出した。


そして…。


そのことを伝えた時の、長谷川君の明るい表情を思い出した。


すずちゃんにパンを選ぶ時の長谷川君。


すずちゃんの感想を伝えた時の長谷川君。


いずれも本当に嬉しそうで。


いつも無表情な長谷川君をそんな笑顔にしていたのは、私じゃなくてすずちゃんだったわけで…。


すずちゃんはすずちゃんで。


あんなにもウチのパンを気に入ってくれていたのは。


パンから長谷川君を感じ取っていたのかもしれない。


そしてそんな二人を、私が引き合わせたんだ…。


そう思うと。


二人の絆がとても強く思えて。


なんだかいたたまれなくなった。