「待って、千春さん!」


隆治が慌てて後を追う。


その時ガラッとドアが開き、千春ちゃんがドンッと誰かにぶつかった。


「おっと~。あれ?千春ちゃん?隆治も」


千春ちゃんがぶつかったのは、右京君だった。


「そこを通して。右京君」


「へ?」


右京君が目をぱちくりとさせる。


でも、すぐに表情が変わった。


千春ちゃんと隆治の様子が、いつもと全然違うからだ。


「ちょい待ち~。千春ちゃん。

どこへ行こうっての?」


右京君が手を壁に置いて、千春ちゃんの行く手を阻む。


右京君の後ろにはサエちゃんがいて、既にドアは閉められていた。


「だって。こんなの…耐えられない…」


千春ちゃんは震える声を出した。


「耐えられないって、何が…?」


右京君は静かにゆっくりと問いかけた。


「聞いて、右京君。

長谷川君とすずちゃん、ここで何してたと思う…?

キスしてたんだよ!

この二人、私に隠れて付き合ってたんだよ!」


千春ちゃんの声が急に大きくなったので、あたしは思わずぎゅっと目を閉じた。