「ひどい人だね…。すずちゃん。

いい人だと思ってたのに、完全に騙されてた。

片岡君と全然進展しなかったのは、長谷川君の方が良かったからなんだね。

人の彼氏をとるなんて、最低だよ。

私のこと、陰で笑ってたんでしょう?

自分の方が上だとか思ってたんでしょう!」


「千春ちゃん…」


目に涙が滲んでいた。


違うのに…。


そうじゃないのに…。


だけど確かに、隆治と付き合っていたことをずっと隠していたから。


どんなに責められても仕方がないけど…。


どうしよう。


もうどうしたらいいかわからない。


ブルブルと震えていたら、隆治が一度あたしの背中をそっと撫で、絡めた指をゆっくり離してベッドから立ち上がった。


「千春さん。大事なお話があります…」


隆治の真剣な声に、千春ちゃんの表情がガラリと変わる。


千春ちゃんは、2、3歩後ろに下がった。


「俺とすずは…、実は…」


「やめてっ!」


「千春さん?」


「そんな話、聞きたくないっ!絶対聞かない!」


そう言うと千春ちゃんは、落としたカバンを拾い上げ、ドアへと走り始めてしまった。