「お疲れー」


カチンとグラスを合わせて、俺と隆治はドリンクをググッと飲んだ。


今日俺は、仕事が終わってから、隆治の引っ越しの手伝いをしていた。


引っ越しって言っても、隆治は恐ろしく荷物が少なくて、あっという間に終わったんだけど。


それなのに隆治は、手伝ってくれたお礼だと言って、今俺に焼肉をご馳走してくれているのだ。


「車出してくれて、ありがとな。

親父さんに、よろしく言っといて」


「あーいいよ。そんなの気にするな。

それにしてもさ、なんでいきなり引っ越し?

住み込みの方が絶対いいじゃん。

家賃も安くつくし、メシも出るし、通勤もしなくていいし」


彼女だって住んでいるのに、なぜ隆治は突然引っ越すことにしたんだろう。


「いや、あのさ。

よくよく考えてみたら、千春さんとはいつか結婚するわけだし。

俺、これから先もずっとあの家にいるわけじゃん?

なんかそう思ったら、一度くらい家を出た方がいいかなって思って。

ずっと世話になりっぱなしってのも、男としてなんか情けないだろ?」


「あー、まあな。

お前の気持ち、わからなくもないよ。

それにご両親がいたんじゃ、千春ちゃんとイチャイチャも出来ないだろうしなー」


「そゆことー」


そう言って隆治は、残りのウーロン茶を全部飲み干した。