「前から思ってたけど。

長谷川君って、私よりサエちゃんと話してる時の方が楽しそう…」


「え…」


千春ちゃんの言葉に、さすがのサエちゃんも笑うのをやめた。


「私の前じゃあんなふうに笑わないし、あんなイジワルもしない。

なんだかいつも壁があって、気を遣われてるような気がするのよ…」


「千春ちゃん…」


「すずちゃんだってそうだよ…」


「えっ?あたし?」


「長谷川君とすずちゃん、知り合って間がないのに。

この前右京君の家の車でドライブに行った時、もうすっかり仲良くなってたよね。

それなのに、どうして私には二人みたいに接してくれないんだろう…」


今にも泣きそうな千春ちゃん。


あたしとサエちゃんは思わず顔を見合わせた。


「わ、私の場合はさー、高校の時からの知り合いだし。

右京の彼女だし、遠慮がないんじゃないかなあ。

すずちゃんはさ、多分顔が私に似てるから、同じような扱いされてるだけじゃない?」


フォローになっているのかいないのか。


サエちゃんの微妙な言葉に、あたしは苦笑いしてしまった。


「あーあー。

長谷川君が引っ越したら、寂しくなっちゃうなあ。

今までは毎日顔を合わせてたけど、今度からは勤務時間内だけだもの。

どうしよう…」


ふぅとため息をつく千春ちゃん。


「大丈夫だって、千春ちゃん。

あなた達、将来を約束した仲なんでしょう?

何も心配いらないわよー」


サエちゃんが必死に励ますけど、千春ちゃんは悲しそうに目を伏せていて。


あたしはどう声をかけて良いかわからず、ただ二人のやり取りを見守るしかなかった。