「いったぁ…」


今のはちょっと腰に来た。


ムカムカしながら振り返ると、あたしの座席のすぐ後ろに黒いキャップ帽を被った男の人が座っていた。


歳はあたしより少し上くらいか、はたまた大学生か?


長い脚を組み、ついでに腕もガッチリ組んでいる。


あたしに対して鋭く向けられた視線。


どうやら乗せた方の足で、あたしの座席の背もたれを思いっきり蹴ったらしい。


「何か?」


手鏡を持ったまま尋ねれば。


「アンタさ、さっきから聞いてりゃ何なの?島に不満があるようだけど」


左口角をつり上げ、少しこもった声で鋭く言葉を投げつけられた。


えっと……。


これは、もしかして。


いや、明らかに。




怒ってらっしゃる?