それを聞いたら、なんだかちょっと吐きそうになった。


「えー、そうかなあ…。
長谷川君ってそんな人かなあ…」


千春ちゃんが首を傾げる。


「もうっ。千春ちゃんまで。

あなた達、付き合ってもう何年?

随分経つじゃない。

それなのに男女の関係がないって方が不自然じゃん」


千春ちゃん、顔が真っ赤だ。


あたしも人のことは言えないけど、千春ちゃんも相当奥手なんだね。


でも…。


知らなかったな…。


隆治と千春ちゃん。


まだそういう関係じゃなかったんだ…。


「うーん…。

それだったらいいんだけど。

とてもそうだとは思えないんだよね…」


千春ちゃんが悲しそうに俯く。


「ん?どういう意味?」


そう言ってサエちゃんが、長いストレートの髪をかき上げた。


「なんかね。

この頃長谷川君、全然元気がないの。

もともと無口であんまり笑わないのに、それがもっとひどくなった気がするの…」


「あの隆治が?

うそー。

そんなの信じられなーい」


サエちゃんが意外そうに目を見開く。


「アイツ、右京の前じゃよくしゃべるし、よく笑うわよー。

私にはひどい態度だしねー。

なんか変なモンでも食べたんじゃない?」


サエちゃんがケラケラと笑う横で、千春ちゃんは複雑そうな顔をしている。