「ーで、千春ちゃんはどう?隆治とは順調なの?」


隆治と聞いて、ドクンと心臓が大袈裟に鳴ってしまう。


この頃やっと、隆治を思い出さないように出来てたのにな…。


「う…ん。

それがね。

長谷川君、近いうちにアパートに引っ越すことになったの」


千春ちゃんの言葉に、思わず目を見開いた。


引越し…?


どういうこと?


「隆治が引越し?なんだか随分急だねー。

ずっと住み込みだったのに、どうして?」


サエちゃんも不思議そうな顔をしている。


「それがね、よくわからないの。

突然、一人暮らしをしたいって言い出して…」


一人暮らし?


なんで急に…?


「ウチの店って朝が早いから、引っ越すって言っても、自転車で通える距離に引っ越すみたいなんだけどね。

どうしてなのか、私もさっぱりわからないの。

お金だってかかるし、不便になるだけなのに…」


確かに妙だよね。


引越す意味がわからない。


「あーっ!わかったー!」


突然サエちゃんが、閃いたように声を上げた。


「え?サエちゃん、わかるの?長谷川君が引っ越す理由」


「そんなの簡単だよー」


サエちゃんがにっこり笑う。


か、簡単?


あたしにはさっぱりわからないんだけどー。