その時だった。


ザッザッという砂利を踏むような音がして、人が庭を歩いてくる気配を感じた。


やばっ。


こっちに来て、部屋の中の様子を覗く気だ!


そう思って身構えた直後、ひょいっと顔を出す一人の男。


バチッと目が合い、あたしの動きは封じ込められた。


「お前さぁ、居るならシカトすんなよ」


腕組みをするその男。


「な、なななんでアンタがここに居るのよ!」


あたしの目の前に立っていたのは、ムカつくあの男、八神だった。


「なんでって、配達だ」


「配達?」


よくよく見てみると、八神の腰にはデニム生地のようなエプロンが巻かれていて、それには白い文字でくっきり何か書かれている。


「八神酒店…?」


「あぁ。俺ん家、酒屋だから」


へぇ……、コイツの家って酒屋だったんだ。


ふと自分があぐらをかいていたことに気づいたあたしは、八神に気づかれないようにさっと正座し直した。