長い夏休みが終わり。


あたしは東京へと戻って来ていた。


フェリー乗り場で約束した通り。


隆治は幾度となくあたしにメールを送って来て。


時には電話をくれることもあった。


隆治がメールをくれるたび。


電話をくれるたび。


嬉しいどころか、苦しくなる一方だった。


東京に戻ってすぐに、片岡君と二人きりで映画を観に行ったけれど。


正直、映画の内容なんてさっぱり頭に入って来なかった。


映画を観ながら思い出すのは。


あの日、おばあちゃんの家の2階で、隆治に朝まで抱きしめられたことばかり。


片岡君は穏やかな人で、あたしをあたたかく包んでくれるけど。


隆治のことが頭から離れなくて、なかなか恋愛に発展しそうになかった。