隆治は一度天井を見ると、長い脚を組んで、首を少し横に傾けた。


「さぁな。

寝ている間のことは、俺にはわからないし。

一方的な振り方したし、不憫だったのかな」


隆治はあくまで冷静に答えた。


「じゃあ、もう好きじゃないってこと…?」


俺の問いに隆治はうんと頷いた。


「ふぅん…」


少し口を尖らせて、俺は壁にもたれかかった。


「本当にもう、全く未練はないのか…?」


念のため、もう一度聞いてみた。


「そんなもんないって。

もう何年経ってると思ってる?」


隆治はあざ笑うかのように、クスリと笑った。


まぁ、な。


確かにそうなのかもしれない。


未練があれば、自分の親友が元カノと付き合うことを応援なんかするはずないし。


本当に、今は気持ちがないのかもしれない。


でも。


だったら、どうして。


その“すず”が、植村すずだと正直に言わないんだろう。


俺は口が堅いって、わかっているはずなのに。


どうして隠す必要が…?