「じいちゃん…。

じいちゃんがまだ生きてたら、俺の人生、今とは変わってたのかな…」


あたしの目の前にしゃがみ込んでいる隆治。


気のせいか、背中が少し寂しそうだ。


「でも、今はパンを作る技術も覚えたし。

それで給料をもらってるよ。

まだ半人前だけど、ちゃんと社会人として働いてる。

じいちゃん、安心した?」


隆治…。


なんだかあたし、せつないよ…。


「ここの景色、すげー綺麗だね。

じいちゃんの好きな海が、遠くまでよく見えるね。

日当たりも良いし、俺、安心したよ…。

また、来るから…。

きっと来るからね…」


そう言うと隆治は、ゆっくりと立ち上がった。


「じゃあ、あたしもお線香あげさせてもらうね」


そう言ってお墓の前にしゃがみ込んで、お線香をあげた。