「隆治君、久しぶりねぇ」


嬉しそうに微笑む母さん。


「ご無沙汰してます」


隆治は綺麗に頭を下げた。


「仕事が休みって、今何してるの?」


母さんの問いに、隆治はパン屋で働いていると話した。


おばあちゃんと母さんの質問攻めにも、隆治は笑顔で答えている。


あたしは事情を知っているので、下手にわざとらしいリアクションも取れず、仕方なく隆治にお茶を入れた。


「隆治、こっちにはどれくらいおるんねぇ?」


「あんまり休みが無いんだ。

だから、明後日には東京に戻るんだけどね」


へぇ…。


それだけしか滞在しないんだ。


「隆治、どこに泊まるん?

島には親戚は住んどらんじゃろう?」


「フェリー乗り場の近くに、古い旅館があるだろ?

あそこに宿をとったんだ」


「まぁ!もったいない。

うちに前もって電話してくれとったら、なんぼでもやりようがあったのに。

あそこは素泊まりじゃろ?

ご飯も出んのにからー。

今からでも断れんのんねぇ」


「えぇっ?」


突然のおばあちゃんの言葉に、隆治が目を見開く。