その話は知っている。


この前の遊園地で、隆治がそう言っていたもの。


じゃあ隆治は、あたしに嘘はついていなかったわけだ。


「ーで俺、その女子が去った後、隆治に聞いたんだ。

お前、島に彼女がいるのかって。

そしたら隆治、『そんなのは断る口実だ。俺には彼女なんかいない』って、そう言ったんだ」


隆治はたびたびそのことで、右京君にからかわれたって言ってたよね。


隆治の性格からして、本当のことを言うのが面倒臭かったんだろうな…。


「隆治がそう言うもんだからさ。

まぁそうなんだろうと思ってはいたんだけど。

でも、一つだけどうしても気になることがあったんだよな」


「気になること…?」


あたしの問いに、右京君はうんと頷いた。


「アイツさ、高校の時からよく俺の家に泊まりに来ててさ。

それはまぁ今も続いてるんだけど。

その時にさ、アイツってよく寝言を言うんだよ」


「ね、寝言?」


「うん…。

しかも、毎回同じ言葉」


「同じ…言葉?」


「それもさ、同情したくなるくらい、すげぇせつなそうに呟くんだ…」


あたしはゴクリ息を飲んだ。



何…?



一体何なの…?





「“すず”って…」