「もしかして陸上辞めたのって…、これが原因?」


以前はプレッシャーやら、毎日の練習がイヤで辞めたって言っていたけど。


「う…ん。実はそうなの。故障しちゃって。

ハードル跳べなくなっちゃったの…」


千春ちゃんが悲しそうに目を伏せる。


「じゃあ、ケガをしてなかったら、続けてたってこと…?」


「うん…。多分ね…」


そうだったんだ…。


千春ちゃんは、陸上を辞めたかったんじゃなくて、続けられなくなっちゃったんだ。


「女の子なのに、この傷跡はかわいそうだね」


サエちゃんが心配そうに千春ちゃんを見ている。


「う…ん。だからさすがに、海とかプールには行かないようにしてるんだ」


そうだよね…。


あたしが同じ立場でも、ちょっと水着は着られないかも…。


「でも、千春ちゃんは可愛いから、大丈夫だよ」


サエちゃんがにっこり笑う。


その言葉に、千春ちゃんも嬉しそうに笑った。