あたしらしい、か。


確かにここ数年、誰かと言い合いしたり、大笑いしたことはなかったような気がする。


隆治に嫌われていると思っていた時は、会うのも憂鬱で。


どうしてあたしにパンを届けたいのか、正直良くわからなかったけど。


隆治は、あたしを元気づけようとしていたのかもしれないね…。


隆治がいてくれたら、あたし、元気になれるのかな?


もともと友達だったんだもの。


恋人でいた期間より、友達だった期間が長かったんだし。


そうだよね。


あの頃に戻ろうと思えば、戻れないことはない。


「戻れるよ、ね…?」


少し自信なく問いかければ。


「戻れるよ」


隆治は優しい目でにっこり笑った。


「また近いうちに会おう。

片岡も今日来れなかったこと、残念に思ってるだろうし」


片岡君か。


隆治と一緒にいたから、その存在をすっかり忘れていた。


「千春さんと計画立てるよ。

来週の水曜、空いてる?」


「うん。空いてる」


「じゃあ、来週ね」


隆治の声は、どこまでも優しかった。