気がつけば観覧車は一周していて、地上が近づいていた。


抱きしめていた腕を離すと、隆治はゆっくりあたしを元の場所に座らせてくれた。


しばらくすると、ガチャンと扉が開き、あたしと隆治は静かに観覧車を降りた。


隆治はゆっくりとあたしの前を歩いていて。


その背中は、なんだか寂しそうだった。


隆治は目についたベンチに、そっと腰を下ろした。


あたしも黙って、その横に座った。


ベンチの目の前では、スワンボートが行き交っていて。


またあのカヤックを思い出して、胸の奥が痛くなった。


「すず…」


「ん…?」


隆治は一度空を仰ぐと、はぁと息を吐いて、ゆっくりと口を開いた。


「俺…。

すずとはもう、恋人同士には戻れない。

それは、もう変えられないことなんだ」


随分な言い方だなと思った。


傷跡にナイフを刺されたようで、なんだか倒れてしまいそうだった。