隆治は肯定も否定もせずに。


ただ黙ってあたしを抱きしめていた。


なんだかもう。


取り返しのつかない地点にいるような気がして。


気が遠くなった。


「隆治…」


「ん…?」


呼べばすぐ返事をしてくれる。


こんな近くに隆治がいるのに。


なんて遠いんだろうと思う。



「あの日に、帰りたい…」



「え…?」



「無人島で過ごした、


あの日に戻りたい…」



好きという思いを伝える前の。



ただ楽しかった頃の二人に。