ヒヤリ、と。


背中に冷たいものが走った。


心臓が急激にドクドクと重い音を立てていく。


「ど、どうして、わかったの…?」


無意識に震えてしまう声を発すると、隆治が大きく深呼吸をした。


「俺も…。思い出したから…」


静かに呟いて、隆治は視線を床に落とした。


そう。


あたしは思い出していた。


無人島で隆治があたしを何度も驚かせて笑っていた時のこと。


一緒に乗ったカヤックのことを。


まさか隆治も、思い出していたなんて…。


「さ、さすがにちょっとかぶっちゃったよねー。

お化け屋敷とか、急流滑りとか乗っちゃうと。

なつかしいね。

そんな日も、あったよねー。

トイレが大変だった、恥ずかしい思い出しかないけど」


思わず早口でしゃべってしまった。


顔は笑っていたけど、指先がなぜかブルブルと震えていた。