「とりあえず、入る?」


「うん…」


なんだか気が進まないけれど、あたしは隆治とチケットを買い、遊園地に足を踏み入れた。


あたしの前を歩く隆治は、今日は濃いピンクのポロシャツを着ている。


こういう色も似合うんだなあと感心していると、隆治がクルッと振り返った。


「俺さぁ、遊園地って学校行事で行った以外、来たことねーんだよ。

だから、どうしていいかわかんない」


「はぁっ?まじで?」


「うん。ガキの頃、親に連れて行ってもらったこともないし…」


少し寂しそうに呟く隆治。


その姿を見ていたら、チクンと胸が痛んだ。


「えっとね。フリーパスのチケットを買ったから、どの乗り物でも乗りたい放題なの」


「へぇ…」


隆治はパンフレットをまじまじと見ている。


「目についたものから、どんどん乗ればいいのよ。

今日はそう混んでないし、全部乗ろうと思えば乗れるわよ」


「ふぅん。じゃあ、こっち回りで片っ端から乗るか」


「えっ、いいの?千春ちゃんを待たなくて」


「ボーッと待っててもしょうがねーじゃん。

せっかく来てるんだから」


それもそうかと納得し、あたしと隆治は入場ゲートのすぐ近くにあったバイキングに乗ることにした。