「やっぱりそうなんだー。
だから、千春ちゃんはあたしにタメ口だったんだね。
まぁ、あたしはむしろ、その方が好きだったんだけど」


あたしがそう言うと、千春ちゃんが申し訳なさそうに、ふぅとため息をついた。


「ごめんねー。

別に隠してるわけじゃなかったの。

でも一浪してるって言うの、なんか恥ずかしくて…」


「えー。うちの大学だったら、浪人してる子なんていくらでもいるじゃない」


「それはそうなんだけど。

自分からあえて言いづらかったんだー」


ふぅん。


そういうものなのかなあ。


「大学じゃもう陸上やらないの?」


「あーうん。もうやるつもりないんだー。
高校でおしまいにしちゃった。

周りには期待されていたけど、そういうのもプレッシャーで。

毎日毎日練習だし、正直疲れちゃって。

私は辞めて、ホッとしてるんだ」


「そうなんだねー。

あたしは運動部じゃないからよくわからないけど。

確かにずっと上位をキープするって大変だよね。

すごい子がどんどん出て来るだろうし」


「ホント、その通りなのよー」