片岡君に言われ、パッと手を頬に当てると、いつの間にか涙が勝手に流れていた。


「うわ、ホントだ。

やだっ。

あたしったら、何泣いてるんだろう。

もう何年も前のことだよ。

引き摺ってなんかないのに。

ごめんねー。

あたし、酔っちゃったのかな?」


慌ててハンカチを出して涙を押さえた。


人前で泣くなんて、あたしらしくもない。


片岡君は、ずっとあたしの顔を心配そうに見つめているようだ。


あ、あんまり見ないで欲しいな。


泣き顔を見られるのは、すごく恥ずかしいから。


「ねぇ、すずちゃん」


「ん?」


「僕ね、すずちゃんに初めて会った時。

ちょっと感じたことがあったんだ…」


感じたこと?


な、何だろう…。


「なんかね。

すごく、悲しい瞳をしている人だなって…」


「え…?」


悲しい瞳?


「とっても綺麗な人だけど、深い悲しみを秘めているような…。

なぜか、そんなふうに感じたんだ…」