「ごめん、パス」


ひらひらと手を振った。


「えぇっ?なんで?」


五十嵐が目をうるうるさせる。


その目に一瞬怯んだけれど、あたしは言葉を続けた。


「家の手伝いがあるの。レモンの害虫駆除よ」


「ガイチュウ?」


あたしはコクリ頷いた。


「葉についた害虫をひたすら探すの。

見つけたら即効!手でこうやってひねり潰すのよー。

人手はいくらでも必要なの。

そういうわけで、忙しいのでごめんねー」


「うっ、そうなんだー」


五十嵐がそう言った直後、予鈴のチャイムが鳴った。


「それじゃあ俺、また来るね」


そう言って五十嵐は、教室を出て行った。


五十嵐となんやかんややっている間に、いつの間にかハルが隣の席に座っていた。


「あ、おはよ、ハル」


「おはよう、朝から大変ね。アイツこそ害虫だよね」


ハルの言葉に、二人でクスクスと笑った。