「そうだよね。これからは片岡君って呼ぶね」


「うん。そうして」


片岡君は可愛い顔でにっこり笑った。


「あ、僕もすずちゃんって呼んでいい?」


「え…?」


「あ、迷惑ならいいんだけど…」


「ううん。そんなことないよ。あたしも植村さんってなんか慣れないし」


「そっか。よかった。じゃあ、すずちゃんで」


あたしはコクンと頷いた。


なんだろう。


男の人とこういう会話をするのって、なんだかくすぐったいよね。


もうここ何年も、誰かにときめくことなんてなかったもんなあ。


しばらく二人で世間話をしていると、あたし達の近くになぜか隆治が一人でやって来た。


ドクンと心臓が大きく跳ね上がる。


やっぱり隆治がいると、どうもあたしは落ち着かない。


「どうした?長谷川」


「んー。ちょっと交代してもらっていい?」


「は?」


きょとんとする片岡君。


「あっちで千春さんが片岡を呼んでる」


「え?まじで?なんだろう?」


不思議そうな顔をして、片岡君は千春ちゃんのいる方へと歩いて行ってしまった。


急に隆治と二人きりになって、ドキドキと心臓の鼓動が速くなってしまう。


でもそんなあたしのことはお構いなしに、隆治はあたしの隣にゆっくり腰を下ろした。