コイツ、脚を組む癖があるんだな。


この長い脚であたしの座席の背もたれを蹴ったんだと思うと、ふつふつと怒りが込み上げて来た。


あの子にはあんなに優しい顔で話すくせに、あたしにはなんでそんな態度?


っていうか、あの子は彼女?


聞いてみたくなって、ねぇと言おうとしたその時。


「すずちゃ~ん」


甘ったるい声が、教室中に響き渡った。


声のする方を見ると、ドアに手をかけ満面の笑みを浮かべる太眉毛の姿が……。


「い、五十嵐」


ボソッと呟いたと同時に、五十嵐はあたしの方に真っ直ぐ向かって歩いて来た。


「おはよう、すずちゃん。今日も美人だね」


にこにこにこにこ。


その人懐っこい笑顔には、感心するけれど。


ふと視線を前に移すと、八神は五十嵐を見てひどくイヤそうな顔をして組んだ脚を元に戻して前を向いた。


どうやら五十嵐と八神は友達ではないらしい。


「ねぇ、すずちゃん。今度の土曜日ヒマ?

よかったら、俺とどこか行かないか?

まだこっちに来て間がないんだろう?俺が色々案内してあげるよ」


あたしの机に手をかけ、しゃがみ込む五十嵐。


はぁ。


転校早々、面倒くさいヤツに目をつけられたものだ。