教室に到着すると、すでに八神は席に着いていた。


同じ便に乗っていることを知られたくなかったあたしは、八神と距離を置いて自転車を漕いだから、当然と言えば当然なんだけど。


自分の席に着くと、ハルはまだ来ていなかった。


椅子に座ってカバンから荷物を出していると、突然八神がクルッと振り返った。


「おいっ」


「な、に?」


いきなり振り返るから、ドキッと心臓が大きく跳ね上がった。


「お前さ、何時の便で来てるんだ?」


「え?」


なんでそんなことを聞くんだろうと、思わず首を傾げた。


「俺の乗る便でギリギリなんだよ。お前俺より遅く学校に来ただろ?

歩きじゃ絶対間に合わないし。

なんで?」


「なんでって言われても……。

あたしもアンタと同じ便に乗ってたのよ」


「え?まじ?全然気づかなかった」


あれだけ女子と楽しそうに話してたら、周りの様子なんかわかるはずないでしょうよ。


「あたし、客室にいたから」


「あぁ、なるほどな」


八神は壁にもたれて、長い脚を組んだ。