「植村さんは、長谷川が作るパンの大ファンらしいね」


「え?あ…うん」


「居酒屋に向かう途中、長谷川がすごく嬉しそうに話してたんだ。

やっと、その人に会えるって…」


隆治…。


「アイツの作るパン、うまいよね。

会う時は必ず持って来てくれるんだ。

アイツ高校卒業して、すぐに就職したんだけど。

仕事熱心だし、アイツは僕以上に遊んでないと思うよ」


思わずフッと鼻から息を吐いた。


遊んでいないのは、隆治も同じだったのか…。


「あの、さ。

今日ってお互い緊張してたし、植村さんも体調悪そうだったし。

ほとんど話せなかったでしょ?

連絡先、聞いてもいいかな?」


「え…?」


びっくりして片岡さんの顔を見つめると、片岡さんが頬を真っ赤にさせた。


「あ、あんまりじっと見ないでくれる?

こんなに距離が近いと、ドキドキする」


「あ、ごめんなさい…」


慌てて下を向くと、片岡さんはふぅと息を吐いた。


「また会って話したいんだけど、ダメかな…?」