あたしが固まっているのと同じように、隆治も目を見開いていた。


その顔は少し強張っているようだ。


千春ちゃんの彼氏は、隆治だったんだ…。


「どうしたの?長谷川君。

ずっとお礼が言いたいって言ってたのに」


千春ちゃんの言葉に、隆治はハッとした顔をして、あぁと頷いた。


「はじめまして。長谷川といいます。

僕が作ったパンを気に入ってくださってるそうで。

ありがとうございます…」


そう言って隆治はペコリ頭を下げた。


隆治…。


はじめまして、だなんて。


初対面じゃないのに…。


さっきの表情からして、あたしのこと覚えているくせに。


あぁ、そうか。


千春ちゃんの手前、元カノだなんて言えるわけないもんね…。


「はじめまして。植村です。

あの…。いつもパンを選んでくださってるそうで。

ありがとうございます…」


あたしもペコリと頭を下げた。