さっきパンを手渡してくれた友達は、須賀千春(すが ちはる)といって、去年の大学祭で知り合った一学年下の後輩だ。


あたしは大学祭実行委員をしていて、彼女もそのメンバーの一人だった。


あたしはわりと真面目に仕事をこなす方で、彼女も同じくそういうタイプだった。


なのでお互い意気投合し、学年は違えど、すっかり仲良くなってしまったのだ。


大学祭の準備で忙しくしていた頃。


ある時、彼女がパンをご馳走してくれて。


そのパンがあまりにおいしかったから、どこで買ったの?と聞いたら。


ウチの店のパンだよと、彼女はにっこり笑った。


そう。


彼女の家は、パン屋さんなのだ。


その味にすっかりハマったあたしは、朝から授業がある時は必ずと言っていいほど、彼女にパンを持って来てもらっているというわけだ。