寒空の下、息を切らして走る。


走ったところで。


隆治の住む町へ行ったところで、隆治に会えるわけじゃないのに…。


駅に着くと、切符を買って電車に飛び乗った。


昼間だし席は空いていたけれど、はやる気持ちが抑えられなくて、座ってなどいられなかった。


しばらくすると、隆治の住む町の駅に着き、あたしは電車を降りた。


降りてみると、さほど大きな駅ではなかった。


ただ出口が二箇所あったから、どっちが隆治の家の方向かわからなくて困ってしまった。


とりあえずあたしは、駅前の改札口を出てみることにした。


ここが、隆治の住む町か…。


比較的静かだし、なかなか良い町だよね。


特にベンチなどはないようなので、あたしは噴水のコンクリート部分に腰を下ろした。


同じ歳くらいの男の子が通るたびに、目で追ってしまうけれど。


隆治のはず、ないよね…。


そんなの、わかってるけど…。


偶然出会える奇跡を、あたしは願わずにいられなかった。