「プッ」


何を思ったか、急に五十嵐が吹き出した。


そしてそのうち、お腹を抱えて笑い始めた。


「ひーっ、くくっ。

すずちゃん、イイ。すげー新鮮。

こんな子に、俺初めて会ったよ」


目に涙を溜めながら、嬉しそうに話す五十嵐。


「マジ、気に入った!

すずちゃん。俺、アンタを絶対落とすからな。

覚悟しておいて」


キリッとした目でそう言って、五十嵐は教室を出て行った。


あたしは開いた口が塞がらず、ただ呆然とその後ろ姿を見ていた。


ふと視線を目の前の女の子達に戻すと、みんなが気の毒そうにあたしを見つめていた。


「すずちゃん、転校早々とんでもないヤツに目を付けられたね」


「えっ?」


「アイツ、狙った獲物は必ず落とすことで有名なのよ」


「えっ、うそっ」


「五十嵐の手にかかって、落ちなかった女子はいないんだから。

ただねー、アイツ飽きも早くてすぐ振るんだけど」


「はぁ?」


なんだ、それ?


「自分を好きにならせるだけならせておいて、手の平返したように振るのよ。

もう最悪なの。

うちら、それで泣いた女の子を何人見てきたことか」


あ、呆れてものが言えない。