ゆっくり出発するフェリー。


フェリーの後部が水しぶきを上げ、海の上に真っ白い道を作っていく。


あたしは水際ギリギリまで走って行った。


隆治が大きく手を振っている。


あたしも、手を振った。


「隆治ーーー!」


聞こえないかもしれないけど、大きな声で叫んだ。


毎日一緒に乗ったフェリーに、今隆治はお母さんと乗っている。


学校へ行くためじゃなくて、東京に行くために。


隆治とあたしを出会わせてくれた思い出のフェリー。


もう一緒には乗れないの…?


そう思うと、視界が涙で滲む。


フェリーはどんどん進んで行って、隆治の姿を小さくしていく。


あたしと隆治はお互いが見えなくなるまで、ずっとずっと手を振り続けた。


隆治…。


大好きだよ…。


待っててね。


絶対。


絶対に東京へ行くから…。