「すず…っ」


繋いでいた手をぐっと引かれ、一気に顔が近づく。


突然のことにビックリしていると、隆治の唇があたしの唇に重なった。


たった一瞬だったけど。


目を閉じる間もなかったけど。


隆治はあたしにキスをしていた。




「好きだ…」




耳元で優しくそう言うと、隆治は泣きそうな顔をして、そっと繋いだ手を離した。


くるり後ろを向くと、隆治はそのままフェリーへと走って行ってしまった。


振り返ることなく、フェリーに乗り込む隆治。


その後ろ姿を見ながら、呆然と立ち尽くしていると。


しばらくして。


フェリーの甲板から、隆治が姿を見せた。