フェリーに足早に乗り込んでいく人達の姿が見える。


もうすぐ出発なんだ。


「隆治…」


不安になって、繋いだ手をぎゅっと握る。


「すず。着いたらすぐ電話する。

いっぱい電話する。

俺の頭には、すずの番号がちゃんと入ってるから…」


「うん…。してね。待ってる…」


隆治が頷く。


「じゃあ、行くよ?」


隆治がそう言うけど、繋いだ手が離せない。


どうしよう。


いざ離れるとなると、すごく寂しい。


いやだ。


離れたくない…っ。