「あの子にもう会えんと思うたら、さみしゅうなるねぇ…。

なんか心配じゃわ。

あの子が島に来たばっかりの頃のことを思い出すわぁ。

ホンマに死んだような目をしとったんよ…。

やっと元気になっとったのにねぇ…」


おばあちゃんの言葉に、胸がぎゅっと苦しくなった。


「聞いたんじゃけどね、美千子ちゃん再婚して、2歳の娘がおるらしいんよ。

いきなり会うたこともない父親と妹が出来て、隆治は大丈夫なんじゃろうか…?

うまくやっていけたらええんじゃけどねぇ…」


妹…?


隆治に妹?


隆治、そのこと知ってるのかな?


どうしよう。


新しい家で隆治の居場所がなかったら…。


「もう出発したんかねぇ…?」


おばあちゃんの言葉にふと時計を見上げると、時計は10時10分を指していた。


「おばあちゃん、あたしフェリー乗り場に行って来る!

もう行っちゃったかもしれないけど、もしかしたら会えるかもしれないし」


「ええよ。気の済むようにしんさい」


あたしはうんと頷いて、家を飛び出した。