恐る恐る顔を見上げれば、この学校に来て初めて見る茶髪。


それに反して黒い太めの眉毛が、やたらキリリと印象的で。


顔はまぁ整っていると言えばそうかもしれないけど、所詮田舎でモテる男という気がした。


「キミが、すずちゃん?

俺、五十嵐 航。

よろしくなー」


ニコニコニコッと愛想の良い笑顔を振りまく五十嵐。


初対面のあたしにそこまで無邪気な笑顔を向けられるなんて、ある意味尊敬してしまいそうになった。


「やっぱ東京から来た子は、雰囲気が違うよなー。

すんげー美人じゃん。

これは学校に来る楽しみが増えたなー」


何それ?


アンタはそうでも、あたしは憂鬱の種がひとつ増えそうなんですけど?


「なぁ、彼氏とかいるの?」


一体いつまでここに居るわけ?


「いません」


いたけど、こっちに来る時にお別れしたし…。


それを思い出すと、ちょっと胸がチクリと痛んだ。