「すず。元気でな」


「うん…。隆治もね」


「誰かに言い寄られたら、彼氏がいるって言えよ?」


「なっ、そんなの隆治こそ。

隆治、ひそかに女子に人気があるんだから…」


「大丈夫だ。大好きな彼女がいるって、ちゃんと言うよ」


彼女、か…。


そうか。


あたし、隆治の正式な彼女になったんだよね?


なんか、ちょっとくすぐったい。


「じゃあ…、行く、ね」


「うん」


「すぐ会えるんだから…」


「あぁ、わかってる」


あたし達は惜しみつつ、そっと身体を離した。


お店の扉を開けると、外は既に暗くなり始めていた。


ロックを外して自転車に乗ると、最後にもう一度手を繋いだ。


「じゃあ、ね」


「うん。またな」


にっこり笑うと、あたしは自転車を走らせた。


繋いだ手が、静かに離れていく。


何度も何度も振り返る。


隆治の姿は少しずつ見えなくなって。


ついに、暗闇の中に消えた。