島に残るあたしより、おじいちゃんを失った悲しみを抱えたまま、新しい環境で暮らす隆治の方がきっとつらいと思ったから。


あたしは隆治に心配をかけたくなかった。


あたしが元気でいることが、隆治の支えになると信じたかった。


「そろそろ行かないと、ね…」


さすがに、おばあちゃんを怒らせるのは怖い。


「…そうだな」


あたし達はムクッと布団から起き上がった。


「すず。

送ってやりたい気持ちはあるんだけど。

送ると、それはそれで別れがつらいから…」


「ん…。

いいよ。

大丈夫。

ちゃんと帰れるから…」


あたしと隆治は立ち上がると、手を繋いだまま部屋を出て、階段を降りた。


お店の扉の前で、足を止めると。


どちらからともなく身体を寄せ合い、抱きしめ合った。