ハルとそんな話をしたせいか、あたしは目の前に座るその八神という男が気になって仕方がなかった。


あたしには初対面であんな悪態をついて来たくせに、学校じゃ女子と話さずにクールに決めてるわけ？


あ、いや。


案外コイツ、女子が嫌いなのかもしれない。


だって初対面でいきなり、女の子にあんな失礼なこと言うんだもの。


きっとそうなんだわ。




そうして迎えた昼休憩。


ハル他女子数名とお弁当を食べている時だった。


ガラッと教室の後ろのドアが勢い良く開いた。


「なぁ、転校生どこ？」


低めの声が教室中に響き渡る。


転校生と言われて、思わず身を屈めた。


『誰？』


小声で隣に座るハルに聞いた。


『3組の五十嵐 航(いがらし わたる)よ。学年一の女ったらしなの。すずちゃん、気をつけて！』


気をつけてって言われても、何をどう気をつければ？と聞こうとした次の瞬間。


「見～つけたっ」


あたしの頭上に、五十嵐と思われる男の声が落とされた。