俺の母親はさ、この島で生まれて、この島で育った人なんだ。


ばあちゃんが早くに亡くなったから、じいちゃんは男手ひとつで、俺の母親を一生懸命育てたんだ。


色々不便なことはあったかもしれないけど、親子二人で協力しながら、それなりにうまくやってたらしい。


だけど母親が思春期になると、じいちゃんは男だしさ、女子の微妙な気持ちがわからないみたいで。


その頃は、よくケンカしていたらしい。


じいちゃんはもどかしくなって、つい母親に厳しく当たってしまったことも、一度や二度じゃなかったって言ってた。


そんな時だよ。


母親が、東京の大学へ進学したいって言い出したんだ。


母親はもともと、退屈なこの島の生活にうんざりしていたし、じいちゃんとも離れて暮らしたかったみたいで…。


そんな母親の申し出に、じいちゃんは反対したんだ。


一人娘だし、東京は遠いし、何かと心配だから。


だけど母親は絶対に折れなくて、じいちゃんは仕方なく、娘を東京の大学に出したんだ…。